日本の子どもたちは、「テストの点数はいいけれど、学んだことを生活に活かすことが苦手」であると言われています。2019年の国際調査(※1)では、小・中学生ともに、理科と数学(算数)のテストの平均点は他の国と比べて高いものの、「理科や数学は日常生活に役立つ」「将来、理科や数学を使う仕事につきたい」と考えている子どもの割合は他の国と比べて低いという結果が示されました。子どもたちが、テストでいい点を取るために勉強しているというような状態になってしまっていることがうかがえます。
このような状況から、近年では、「日常生活や社会と結びついた理数教育」や、「理科や数学の知識・技術を使って、問題解決ができるようになることを目指した学習」が必要であると言われています(※2)。子どもたちが、「どうしてこうなるんだろう?」「今一番解決しなくてはいけないのは何だろう?」と問題を発見し、どうやったらそれを解決できるか考え、解決するために自分の知識を使いながら試行錯誤すること。状況に応じて情報を手に入れて活用したり、他の人との関わりの中からも学んでいくこと。今、そのような「自立的な思考力」を育む理数教育が求められています。
ELMSのベースとなっているGEMS(※)では、期待できる教育効果として以下のような項目が挙げられています。
参加者、生徒は
指導者は
※GEMS(Great Explorations in Math and Science;ジェムズ)は、カリフォルニア大学バークレー校の附属機関ローレンスホール科学教育研究所で開発された、幼稚園から高校生までを対象とした科学と数学の参加体験型プログラムです。
ELMSのプログラムは 「仮説を立てる(導入)→探究する→概念化する→新たな問題を解く(応用)」 という体験学習サイクルを取り入れています。 ELMSでは、説明を聞くことよりも子ども自身が行動することを優先しており、まずは楽しく実験することから始めます。そうすることで、子どもたちは自分から積極的に活動に取り組み、基本的な概念やアイディアを理解するのに必要な体験をします。そして、自分たちが得た体験や結果をもとに次はどのような実験をしようかを考えます。 さらに、実生活の中でのつながりを見つけていきます。
ELMSでは、科学的思考力・判断力のみならず、文学、芸術、音楽など、MI理論をプログラムに取り入れており、学習者の主体的な探究を促すように構成されています。MI理論とは、ハワード・ガードナーによって提唱された、従来の知能(IQ)テストから引き出される言語的・数学的能力を指す「知能」という狭い概念に対して、より多元的に知力を捉える新たな枠組みです。それによると人間の知能には少なくとも8つの領域があり、これらの知能はそれぞれ独立しながらも関連し合っているといわれています。個人ごとに得意・不得意のコントラストが異なるため、複数の知能を働かせるような活動は学習者の主体性を高めることができます。